2015/08/25 Category : 未選択 ドラマ・デスノート 平凡な学生から新世界の神に 現在絶賛放送中のドラマ・デスノートについて、今回感想を書いて行こうと思います。 放送前から視聴者を騒がせた大幅なキャラクターの改変、またシナリオにも多くのオリジナル要素を含み、原作を元にしたメディアの展開としてかなり斬新なところに踏み込んだこの作品。 率直に言いますととっても面白いです! オリジナルだからこその一味違った先の読めない展開・新たな「デスノート」という作品の魅力を存分に見せてくれて、毎週の楽しみになっています! そんなわけで以下、第九話から新章突入という事もあり一話〜第八話までのドラマ・デスノートについて書いて行きます。 あと、私は昔原作も大好きでアニメや映画も見ていた、ということもまず言っておきたいです。 もちろんネタバレもあります! 今回は1〜8話まで総まとめで話して行きたいので、大まかなあらすじは書かずキャラクターや特徴的なシナリオについて書いて行きます。 ●まずなんといっても大胆なキャラクター改変 やはりこれが今作の大きな特徴となります。 原作では東大を主席で合格し、自信に溢れ、自分の正義を疑わず、第一話にして「新世界の神になる」と宣言しきった夜神月。そんな彼が、これといって特徴も無いただの凡才な一般市民としてノートを手にする事になります。 正直に言いますと私は原作既読者として、はじめにこの設定を見た時は「こんなの夜神月じゃない!」ということで反発していました。 デスノートという作品の魅力は月とLという天才2人がノートを巡って繰り広げる頭脳戦 だと思っていたからです。 しかしいざドラマ第一話を見て、デスノートという作品の面白さは決してそれだけではない。という事を思い知らされました。確かに月とLの頭脳戦はデスノートにおける大切な要素ですが、「デスノートを持った人間の思想の変貌」「正義と正義のぶつかり合い」「奇妙な人間関係」 等々の魅力も確かに存在する作品であり、このドラマ版は原作では主題には上がらなかったこれらの要素に向けて本格的にスポットライトを当てたものとなっています。 さらに、ライトを当てる方向を変えたからといって頭脳戦が無くなった訳でもなく、十分満足出来る程に先の読めないスリルある展開を原作のトリックも使いながら繰り広げてくれるのが憎いところです。 凡人となった夜神月はもちろん、その月にぶつける相手として特異な行動を排除し普通の青年の様になった、5割増ほどで憎たらしさの上がったL。ニアとメロ2つの人格を抱え不安定ながらもLへの信頼と尊敬を明確に表すニア。 上記三人程ではありませんがやはり少しずつ原作との差異のあるミサ、魅上、夜神総一郎、さらにレム。彼らもずいぶんと楽しく月を振り回してくれます。 ●主人公・夜神月 凡人という設定からスタートを始めた彼。まず第一話の時点で「これは面白い」と思わされたのはあの夜神月が自分のやっている事に自信が持てず壊れそうになっている姿。なにより、氾濫したネットの、顔も名前も分からない人たちの賞賛の意見により自分の正当性を必死に確認するシーンでした。 ここでただ悩み苦しむだけでなく東大を主席で合格し、自信に溢れ、自分の正義を疑わず第一話にして新世界の神になると宣言していたはずの「あの夜神月が!」と思わせてくれることによって更にインパクトのあるシーンとなっています。 原作とドラマを照らし合わせる事によって、原作の月の精神力がいかに凄まじかったのかを初めて実感しました。そしてドラマの方も原作があるからこそ月の苦しむ姿が印象的になりまた凡才としての泥臭さが光ります。 2つ合わせてさらに楽しむ事が出来るという、原作ありきの展開作品としてかなり斬新なものとなっています。 そして1話から8話までかけて、このドラマ版夜神月で何が描かれたかというとやはり「思想の変貌」「ノートも持ったものにしか訪れない恐怖や苦悩」平凡な学生が新世界の神を謳いだすまでの過程です。 ドラマの月は佐古田という男の名前をまず衝動的にノートに書いてしまいます(ここシブタクじゃないんだ…w)そしてそこで人が死んだ事で喜ぶ人がいるという事実を知ります。しかしその時点では罪悪感に苦しみノートを捨てようとしますがある事件がきっかけで自分から人を殺す事となります。それが音原田の立てこもり事件であり、月のはじめの殺人は純粋に父親を救いたいという想いから始まって行くのです。この、どうしてもノートを使わざるを得なかったこと、父親を助けたかっただけという事が後々もピックアップされて行きます。 そして月はついに犯罪者殺しをはじめ、どんどん後戻りが出来なくなって行きます。 この月は「世の中のためになるから」という漠然とした正義感のもとで行動をしており原作の月のような「争いの無い世界を作り正義の裁きを下すものの存在を知らしめる」という思考とは異なっています。 ネットの中でキラが生まれ一部の人々から賞賛されるようにもなり、自分のやっている事の正当性を確認して行きます。さらに「キラ」という存在に対して自分がキラそのものであるにも関わらずこの月は自分もキラの信奉者のような雰囲気があり、月の中でキラが憧れのヒーローのような存在であるかのようです。 またこのキラについてLに対して「喜んでいる人が、救われる人が大勢いる。それがキラだよ」と語っており、この時点ではキラという存在がどこまでも他者依存なところも面白いところです。 そしてLとの戦いによりさらに行動が過激になって行き、ついには犯罪者ではないFBI捜査官までも正義の味方であるキラの邪魔をさせない為に殺そうと行動を始めます。 「使命」という単語も頻繁に使用するようになり「これが俺の使命だから」という言葉の下で何の罪も無い人間を殺しにかかります。 このFBI捜査官レイ=ペンバー殺しは原作でも印象的なシーンでしたが、このドラマでもまた別の角度から面白いシーンでした。 原作では月の非情さに凍りつき、月の頭の良さ、行動力、そして自信が印象的です。Lをからかうような余裕すらも顕示しながらスマートにFBI捜査官全員を始末してしまいます。 しかしドラマ版月はそうはいかない もともと天才設定がなくなり凡才なりに頑張らなきゃ行けなくなった事に加え、レイ=ペンバーが偽名を使用してくるという展開がおこりハードルの高さが2、3段回上がってしまい大変泥臭い戦いとなって行きました。 このレイ=ペンバーの偽名は原作読者を気持ちいいくらい嵌めまくった良いミスリードでした。原作の展開を知っているので「どうせバスで名前を手に入れてファイルにノートを入れてレイも殺すんだろう」と高見で胡座を組んでいたところを思いっきりたたき落とされた気分でした。 さらに月くんがダメダメというかスマートさが無さ過ぎるものだから「何やってるんだ!!頑張れ!頑張れ!」と思いっきり感情移入させられてしまいました。(ここからドラマ版を「月くん」と読んで行きます) しかし頑張って良かったねという話では勿論ありません。 月くんはレイに婚約者がいるということも知りながら殺しを止めようとはせず、さらに婚約者や幼い頃の父との暖かい思い出など使用して人殺しを行って行きます。 原作ではスマートさと非情さが見所だったレイのシーン、ドラマ版では月くんの奮闘と殺意が見所となっているのです。 レイと月くんのにらみ合い、お互いの正義と悪意のぶつかり合いも大変に見応えのあるシーンでした。ここで明確にキラの敵である人間に対して「殺してやる!」と殺意を漲らせています。 ここからミサとも合流して行くのですが何となくミサも原作よりさらに一段階偏差値が下がったような雰囲気で、監視カメラのついた中夜神家に乗り込んで来たところは「何をするだァー!許さん!!」と叫びながらも思わず笑ってしまいました。 しかしミサは強烈なキラ信者であり明らかにお荷物であるにもかかわらずミサの「キラに救われた」という台詞により月くん自身も思うところがあるような絆された様子でこの辺りの未完成さがやはり月くんの魅力だなあと思いました。 ミサに対して状況が悪くなれば殺すという宣言も非情さではなく誠意を感じる言葉となっていました。 そしてミサ監禁となりますがこの月くんはミサの身も確かに案じているようでした。元々月くんはアイドルとしてミサを応援していましたし、この設定もただでさえ苦しい心理状態にさらに追い打ちをかけてくるように活きてくるなぁと思いました。 この辺りからLの「友達」発言も大幅にプッシュされて行きます。ここはドラマ版として、月くんとLの関係にも切り込んで行きたいという意思も感じられていたので原作の「友達」発言を掘り下げてくるのは「ガンガンやって下さい!」という感じで大歓迎です。 原作通り月くんが記憶を失いLと共闘して行く事になりますが、その時の2人の掛け合いがなんとも面白いです。原作では「友達」と言ったLの真意やそれに頷いた月がどう思っていたのかもよく分からず、そこが魅力でもありました。それを受けてドラマ版を見てみるとやはり原作よりも全面的に発言に嫌みさがにじみ出てるなと感じました。原作もおそらく腹黒い事を考えてはいたんでしょうけどドラマでは黒さを隠し切っていませんでした。 しかしその発言をうけて凡才月くんは明らかに動揺しますし、その動揺を見てLの方も何か感じる風な描写がみられました。 さらにこのヨツバ編では、ヨツバでのキラ探しよりも記憶を失った白月くんに重点的に焦点が置かれています。そのぶんヨツバ編があっさりとした印象になってしまいましたが話数も限られているし妥当な取捨選択かなと思います。 そしてヨツバ編が一話にまとまった事により、月くんとLが交流を深めるシーンと「計画通り」とほくそ笑むシーンの間隔が小さく、一話に収まっているというのも好きです。ついさっきまで2人で協力していたのに!という悲しさが際立ちました。 また白月くんのインパクトも大きくノートによって月くんは遠いところまで来たんだなぁとしみじみしました。「キラなんじゃないか?」「犯罪者を殺そうと思わないのか?」と問われたときに「もしかしたらやるかもしれない…」と自分で自分に疑いをもち、記憶の違和感にも遭遇します。この辺りも好きな原作との違いです。「月くんは悪い子じゃないんだけどノートを手にして暴走をはじめ戻れなくなってしまったんだな」ということを再確認して思い知る事になりました。 そして原作の月。改めて自分の事を一切疑わず自分は間違っていないと言い切る自信に溢れた凄い奴だなと感心しました。思考の変貌がスイッチを切り替えたように180度で起こってしまうのもとんでもないです。 人に向かってなかなか言えないですよ。こんな事。 そして遂にやって来てしまった「計画通り」 記憶を失っていた夜神月が記憶を取り戻し、今までの綺麗な月からスイッチが切り替わったかのように凶悪な笑みを浮かべるのが印象的な作中でも屈指の名シーンです。 しかしこのシーンも原作とは少し意味合いが違うシーンとなっています。 この「計画通り」の笑みによって平凡な学生だった青年が完全にキラとして進む事を決定づける、キラ誕生のシーンとなっています。 犯罪者殺しをしている中も、ヨツバを捜査している中でさえ自分の進む道に戸惑い、恐怖しながらも「もう戻れない」からこそ苦しみの中を突き進んで来た月くん。ですがこの場面によって彼は遂に自分の意志でキラとしての道を受け入れ突き進み始めます。「キラが世界を変えてやる。いや、俺が世界を変えてやる」この発言によって正式に夜神月はキラとなったのです。「父さん・竜崎ごめんな。これが俺の使命なんだ」この台詞も大変印象的です。 ドラマ版での父・夜神総一郎はある種人間の善性代表のような存在です。しかしそんな父は家庭を省みない・母幸子の死にすら居合わせない等の理由により月にとっては理想ではなかった。父との確執があった。これもドラマの改変として相当に良い改変だったと思っています。 もともとこのような理想の違いがあったからこそ月くんの進む道の選択にさらに説得力が出てきます。 それでも、ここまで来てもまだ完成には弱い。これだけではまだキラとは呼べない。 彼はまだデスノートの代表格でもある台詞「新世界の神」という単語を発していないのですから。 そして最後にダメ押しとして月くんの前に立ちはだかったのはLとの決戦です。 この月くんとLの決戦シーンは本当に申し分ないくらい最高なシーンでした! 自分の道を決定付けてしまい着々とLを殺す計画を進めて行く月くん。しかし何者かによってノートが奪われてしまいます。今まですました顔をしていたくせに「ぅえ?」とかいう間抜けな顔になるのは「ここまで来てもやっぱまだちょっとダメダメなのかい!!(笑)」と突っ込んでしまいましたし月くんらしくてちょっと可愛さも滲み出てしまいました。 そうしてまだまだ月くんのケツが青いことを見せて始まる、第八話。検事の魅上も合流しさらに対決はヒートアップして行きます。ここからは原作に無い完全オリジナルの展開となり、どうなるのか放送前からハラハラドキドキしながら待ち構えていました。 月くんとLの一騎打ちなんて見せ場、しっかりと期待以上のものを見せてくれるのか不安もあったのですがそれも杞憂になくるらい、そしてこのドラマ版だからこその熱い戦いを存分に見せてくれました。 まずやはりこの対決は(表面上は)ロジックなどをかなぐり捨てて私情100%の殴り合い(物理)にしたということが大きな特徴です。デスノートという作品として推理や頭脳戦をして来ておきながらここで完全な感情論が出て来るのです。 今までとことん感情面に重点を置いて来たドラマ版として、お互いの感情が爆発してぶつかりあうというのはとてもふさわしい決戦だと思いました。むしろ私が個人的に月とLに一度全力で殴り合いをして欲しい!!と願っていたのもあって、これをやるっきゃなかった!というレベルの決戦でした。 そして月くんに向かってLがグイグイと自分の心情を吐露するのは本当に真に迫るものがありました。この辺りもLのキャラクター性もありますが、Lに多くの話数をかけて月くんという人間を監視させてきた賜物だと感じました。 Lによって「どうしても止まれなくなってしまったんだよね?」「僕たち友達だろ?」「君を止めてあげたいんだ」という的確に月くんの柔らかい部分に突き刺さる台詞が並べられ遂に月くんは行動に出てしまいます。 ここで行動に出た後どうするんだろうと思っていたのですが、魅上によってLの名前がリークさせる展開は全く頭が回っていなかったので素直に感動しました。 また、やはりここで動いた。というのが月くんです。目の前で名前を書かれそうになったからというのも勿論ありますが、Lの発言に耐えられなかった。というのがやはり大きい。折角今まで何人も殺して来ておきながらようやくキラとして生きる決意が出来たというのに「君を止めてあげたい」なんて言ってくれる人の存在は容認出来ないでしょう。 さらにLはただ止めてあげたいと言っているだけでなく月くんの心情、歩いて来た道のりまで的確に言い当てさらには理解まで示して来てくれています。キラである自分のことを理解してくれて、さらに止めてあげたい。なんて言ってくれる存在はきっともうLしか居ません。 しかし月くんは止まれない。もうその段階は過ぎている。お別れだ優しい優しい俺の敵。 「お前にも新しい世界を見せてあげたかった…」 そう言い放ちながら涙ながらにノートにLの名前を書きます。 ここの対決の中ではじめて、キラの作る「新しい世界」というフレーズが出ました。 自分を止めてくれる、きっと最後の最後の砦であったであろう友達を自分の手で消した月くんは次回からさらにキラとして本格的に始動して行くのでしょう…! (月くんとLの対決には最後にとんでもないどんでん返しがありましたが、それについてで月くんの話をするのはまた続きを見てからということで!) ●探偵・L 次にキラを追う世界的名探偵・L。 Lも月同様大幅なキャラクター改変が行われています。やはり一番大きな改変は体育座りや極度の甘党、摘むような持ち方などの特異な動作がすべて排除され全体的に一般的なイメージを受けるキャラクターとなっています。こちらの変更点も始めはもやもやしていたのですが、凡人として頑張る月くんを見ていると、彼にぶつける適役としてふさわしいキャラクターにLも変更されていると感じました。 序盤のうちは、Lの挑発的な捜査に余裕の無い月くんが苛立ったりいっぱいいっぱいになって苦しんだりしている姿を存分に晒してくれる為、月くんの奮闘を見守って行くというスタンスでこのドラマを見て行こうとするととても楽しいです。 また一般人である月くんに対してLのみが原作のままだと、とてもではありませんがL相手に月くんが立ち回れるとは思えませんし、キャラクターが喰われかねません。 なによりも中盤になって切り込んでくる月くんとLの奇妙な友情も今作において重要になってきます。 このドラマ版のL、序盤は月くんに比べてどうしてもインパクトと魅力に欠けるキャラだと思っていました。何を考えているか分からない上に挙動の端々から性格の悪さが見え隠れする。どうして毎週脱ぐんだ…。そんなイメージでした。その考えが第七話・第八話で一気に覆される事となります。 やはり明らかにLの内面に踏み込み始めたのは第七話です。ここから月くんが記憶を失っており、月くんとLの2人の会話が多く繰り広げられます。そのときに月くんの発言に対するLの反応も印象的でした。月とLのモノローグが交互に出てくるのも大変好きです。 またニアとの対話もあります。ここでLがなんだか哀愁を感じもしますし、「最後のピースを嵌めるのはニアかも」という台詞も聞いていて凄く悲しかったです。 実を言いますと原作では私はLが一番好きなキャラクターで、Lが死んだときには涙で枕をぬらしてふて寝しまくった思い出があるので死亡フラグを立てられるととても辛いです… そして、上記したようなこれらのシーンを見ていて私はこのドラマ版のLは原作よりもいくらか精神が不完全でブレの余地のある人物だと感じました。原作のLは、何を考えているのか分からず腹黒さもありますがそれを消して余りある愛嬌で性格の悪さも気になりませんでした。なによりも浮世離れしたあの言動の数々が、容赦のなさや行動の過激さを和らげる一員になり、何を考えているか分からないけどそこが魅力という雰囲気を醸し出していました。 しかしこちらの不完全なうえに言動の一般的なLはそうはいきません。発言がいちいち嫌みったらしく感じますし、性格の悪さがどうしても気になってしまう。ですがだからこその原作ではなかった・見えなかった人間らしさが明らかになっていきます。月くんに接する事によってLの方にもブレが、視聴者にも見えるように生じて行くのです。とくに動揺が感じられたのは記憶を失った白月くんの「殺しの方法が分かっても仲間を死なせたら負けだと俺は思う」という台詞や拳銃を向けられたLを白月くんが庇うシーンです。 この辺りでLは夜神月という人間がどのような人間か、彼がキラだとしたらどのような思想と過程で犯罪者殺しを始めたのかを理解したのではないでしょうか。 そしてそれらの事をふまえた上でお互いに殺し合いの最終決戦に挑みます。 この決戦は月くんの所でも書きましたが、Lについてで語ると、まず一番始めに監視カメラを壊したという事実がとても好きです。この行動はとても『L』という存在らしいです。 作戦として月くんに感情戦をしかけますが、「ふっかけてみたら怒ったから。ほら、キラだった。」なんて後付けのものは決定打とはしません。 またL自身が言っていましたがこの月くんとの対面は本当に個人的なところも大きかったのだと思います。「謎が解けるだけで満足だったのに、人に興味を持ったのは初めて」と語っています。そして月くんのことを理解した上で全力で叫んでくるのです。この展開は、今までLが月くんを監視するシーンに多めに尺が取られていたのですが、その辺りも活きて来たと感じました。 ただこの場面の憎いところは、ここまでやっておいて最後の最後で綺麗な美談としてくれないところです。 最後に名前を書かれた筈のLが起き上がってくるのです。 このシーンはLが死んだと思い込んで泣きまくっていた私も思わず「!!??」となって一気に涙が引っ込んでしまいました。 これは推測になるのですがおそらくLは「ノートに細工をしていた」「名前を先に書いておいた」等の仕組みを用意していたのでしょう。そして月くんを逆上させてノートを使用させる。という計画の上だったのです。頭脳戦をするかと思った月くんとLが殴り合いをはじめたかと思ったら実は頭脳戦だった!という二転三転してくる本当にすばらしい対決でした。 こうなるとLが月くんに言った発言がどこまで本心だったかも分からなくなってしまいましたがそこも面白いと事だと思います。七話でLのことを把握したつもりになっていたけど本当はLの事はやっぱり全然わかっちゃいなかったしわからねぇ…と私自身手のひらの上で転がされている気分で、何度も言っている癖に内面が読み切れないのがLというキャラクターの大きな魅力でもあるんだなとここにきて実感させられました。 ただ100%全てがデマカセの発言とは思えなかったのも事実ですので、きっと深層心理の中に月くんに対して明確に何か思うところはあったんだろうと受け取っています。 始めのうちは月くんの方にもLに気を向ける余裕も無いし、Lも月くんとあざ笑うかのような言動ばかりをとるしでこのドラマ版の月とLじゃ対等になって友情を嘯きだすのは無理かもな…と思っていたのですが全然そんな事はなかった。 むしろ嘯いていたはずの友情が本当のものになってしまうかもしれないという強烈さすらも感じました。お互いの正義は理解し合えるのにだからこそどうしても相手の正義は容認する事は出来ないこの2人が今後どうなって行くのか、目が離せないです。 また最終決戦もまだ続いていますしこの戦いがどのように幕引きになるかもとても楽しみです。 本当に個人的な意見を言わせてもらうと、Lはかなり大好きなキャラクターなので死亡して途中離脱は凄く凹むし寂しいからどうにかならないものか… ●弥海砂・魅上照 熱狂的キラ信者の2人。 この2人は月とL程の改変はありませんでしたがチラホラとアレンジが加わっている風なイメージです。 ・まず弥海砂 ミサは原作からして「馬鹿」というサブタイを頂戴する程のおバカキャラでしたがドラマ版ではさらに頭の悪さと行動力が加速していました。 そもそも、ミサの馬鹿さが加速したというよりも月くんが凡才というのが相当に痛いところです。原作のどっしり構えている月だとミサですらある程度はコントロールして、邪魔になったら捨てるという安定感抜群の扱いをしています。 しかし月くんは能力がミサを引っ張れる程無い上にミサに絆されるというブレっぷりで見ていて不安になってくるレベルです。 あと、月くんがミサの追っかけという設定がまたしても活きてきます。場面短縮もあったんでしょうがこのミサにはどうしても警察を使ってキラにメッセージを送り、変装して青山で月を特定という芸当が出来るとは思えないので。 しかし自分でコントロール出来ないからこそ月にとってミサがどれだけ厄介だったのかも共感出来ました。そもそも単独でマスコミに脅迫状を送られたり、警察幹部を公開処刑なんかされたらそれだけで胃に穴が空いて寝込みそうです。 月の「Lより厄介」発言もしっくり来ていなかったのですがこれなら納得です。 警察に目を付けられているっていうのに大学に乗り込んで来た時も思わず吹き出しました。 ただ珍しく原作よりハードルが下がっているのはレムが原作ほど過激ではないという所です。 原作同様ミサを溺愛し、ミサに危害が加わった事に怒りを抱いていましたがミサの幸せの為なら死んでも良いという常軌を逸したような言動は見受けられませんでした。 しかしだからこそドラマ版は今のところですが、まだ二回目の目の取引もしておらず、月くんも頼りないながらもミサの事は本当に気にはかけてくれているという、ミサにとってはいくらか優しい世界になっているのではないでしょうか。 ・次に魅上照 こちらも特徴的な違いは行動力でしょうか。 大まかな思想や過去に違いは見受けられませんが、第二のキラを自分なりに特定して「キラに会わせてくれ!」と詰め寄ったりミサに強襲を差し向けたり、ノートが自分の手に渡ると好き勝手に犯罪者殺しをして行くという。ちょっと落ち着けよ…といいたくなる程のハッスルっぷりです。原作でもキラの番組に出演して発言したりはしていましたが。 特にキラとはなんのコンタクトもとらずにノリノリで犯罪者殺しをしているシーンはまたしても思わず吹き出しました。ミサも魅上も好き勝手に動くなぁ…笑 しかしこの暴走っぷりもなかなか月くんに合っているのではないでしょうか。 というよりももし魅上と合流を果たしても月くんに魅上の手綱がとれるかはかなり心配していた要素でした。 原作の魅上は独善的で過激な行動と圧倒的なプライドの高さが印象的なキャラクターであり崇拝する神ですら自分を中心に回っているという思考回路です。そんな魅上がダメダメな月くんと合流なんかしたら出会って五分で「アンタなんか神じゃない!」と発言されるんじゃ…と思っていたのですが今のところは狂信者というよりなんだか主人に懐いた大型犬のような雰囲気で、なんとなく大丈夫そうという漠然とした安心をしています。 ですが月くんがアンタなんか神じゃない!と言われるシーンはちょっと見てみたかったりするのでチラチラと期待はしておきたいです。 もしかしたら魅上との関係も掘り下げて来て、深まって来たと思ったら最後に手のひら返しなんていうドラマ版らしい原作以上に残酷な展開も期待出来るかも… ●Lの協力者・ニア ニアに関しては役者さんが女性な上に二重人格、しかもメロは人形という作中で一番衝撃的な改変がされています。 私はドラマは楽しみまくっているので改変も受け入れていますが流石にこのメロはどうかと思いましたし、メロ好きの人の苦言はしょうがないかなと思います。 ただニアとメロで二重人格の同一人物というのは相当に面白いです。 現在の段階だと二重人格者としてニア人格とメロ人格が競合しあいお互いに否定し合っている状態です。精神的にも不安定なところが見られ、今後のニアの課題はメロ人格との折り合いかなと予想する事が出来ます。 ニアの方は女性的であり、穏やかで可愛らしい印象を受ける人格をしています。原作の狡猾さは感じられなくなり、ハウスからわざわざ日本までやってきてLの指示の元でヨツバとコンタクトをとったりと行動力の高さもあります。 対してメロは大変に感情的で常に攻撃的な発言を繰り返しています。魅上の使いだったノート強奪犯を殺してしまった時は驚きました。今後メロが何らかの行動を起こして捜査に関係してくるのでしょうか。 このメロの人格はニアの思っている本心が爆発したものなのか、全くの別の人格なのかは現時点では判断出来ませんがニアはメロの人格をコントロールできていないようです。 「2人ならLに並べる。2人ならLを超せる。」 この台詞がメロと融合を果たしたパーフェクトニアから発せられるのか気になるところです。ただこの台詞を言うとしたらLがもう居ないという事になってしまうし、それは悲しい…でもこの台詞は聞きたい…でもL…難しいところですね… このドラマ版は先が見えないというのも面白いところの1つなので勿論、現段階では最終的に誰が勝者となって生き残るのか全く見当がつきません。 またドラマのニアはかなり分かりやすくLに対して尊敬と親愛を見せています。 Lと2人でパズルを組み立てるシーンは思わず心温まりますし、Lを不安げに見つめるシーンは大変可愛いです。 もしLが途中で死亡するならニアはどのような行動に出るのか、Lが最終局面まで生き残るならニアはどのような役割を担うのか。 予想や妄想は色々とできるのですがやはりどれが選ばれるのか、はたまた全く予想外なのか。やはり放送を待たないとなんとも言えないですね。 ●その他の登場人物達 大旨大きな変更点はありませんがやはり一部アレンジの加わった人もいます。 ・夜神総一郎 原作から正義感に溢れ、一般的な正義代表のような人物であり正しいからこそ薄幸さが悲しい人物でした。ドラマでも正義感は変わっていませんが、彼の正義に明確な欠点があるところが大きな違いとなっています。 それが妻・夜神幸子が既に死亡しており、警察官としての仕事に従事するあまり彼女の死に目にすら居合わせなかったことです。 この出来事がきっかけで家族とは距離が開いてしまい特に息子の月くんとは非常によそよそしい関係となって行く事となります。月くんの方も仕事にばかり携わり家庭を省みない父に不満を持ち、「父と同じ警察官にはならない」とノートを手にする以前から言っています。 しかし父を否定し切っている訳でもなく立てこもり犯に人質にとられた時は自ら殺人を犯してまで助けようとする程には慕っていたのも事実です。 そんな慕う事は出来るけどどうしても受け入れきれない微妙な関係の父と月くんとの2人での対話は度々作中で印象的に行われています。 月くんの方は「計画通り」と笑みを浮かべるまでは父の話に耳を傾け頷く描写をします。しかし「人を殺せる力をもった人間は不幸だ」という言葉を聞いて「俺は不幸ではない」と結論を出すようにもなりドンドンと2人のレールが分かれて行きます。 そして父の方も月くんを完全に信用し切っている訳ではないというのも原作との違いです。 原作の総一郎は「この息子がキラな訳が無い」と確信しており完全に息子を信用し切っています。しかしドラマ版は息子ではないと信じたいとは言うもののLの推理を聞いて「もしかしたら…」とも考えます。これは月くんが内面を隠し切れていない凡才ゆえもありますし、父と息子の間に言い切れる程の絆がなかったことでもあります。 月くんは目に見えて大幅に不完全と改変されていますが、息子が不完全ならば父も、という改変が親子そろって同じように行われているのは大変丁寧だと思いました。父の方も変わっているからこそ息子の変化もさらに丁寧で自然に感じられ、月くんの行動に説得力が増します。 ・模木さん、相沢さん、松田 模木さんは寡黙で黙って仕事をこなす人物でしたが、発言を多くし熱血さが滲み出る人物となっています。この改変は本編とは大きな関わりはありませんが模木さんの存在のありがたさは大幅に増しました。 みんなそろって不安定になりグラグラとした雰囲気の中なので、そこにどっしりとかまえて兄貴然とした存在があるのは安定感があって大変ありがたいです。焦燥していく夜神局長に良い相談相手があるというのもありがたいです。 思想にぶれもなくとにかくキラを捕まえるという意思の上で行動してくれています。 相沢さんは今のところ大きな見せ場も台詞も無いのでなんとも言えないのですが、今後役割が出てくるのかは気になるところです。相沢さんといえば内部からLと月、両方の行動に疑問を持ち離脱したりニアに情報を漏らしたりと自分で判断しての行動が印象的な人物でした。Lとの捜査の内にLに反発する描写は多々ありましたが、離脱まではしませんでしたし、残り話数的に月くんに疑いを持って行動を起こすかは微妙なところです。一応そう言う展開も頭に入れておきたいくらいで。 松田はほんとうに言う事が無いくらい原作通りでびっくりしました。逆に「なんだお前のそのクオリティは 笑」と笑いたくなってきますが不安定で、さらに張り詰めた空気の中で程よくリラックス出来るオーラを放ってくれているのでこれまたありがたいです。役者さんの醸し出す愛嬌も凄まじいです。 ●熱演が光る役者の方々 そして語っておきたいのはドラマを演じる役者の方々。 私は役者に注目して作品を見るタイプではなく情報も大変乏しいのですが、それでも目を見張る程の演技がこの作品をさらに良いものにしてくれています。 特に主演の窪田正孝さん 私は夜神月役ではじめて窪田さんの演技を見たのですが、月くん役が窪田さんで本当に良かったとドラマを見るたびに思います。 焦ったり余裕の無くなった顔が実に緊迫感と悲壮感があり見ているこっちもハラハラしてきます。さらにこんなダメそうな月くんも完璧に演じてくれながらキラとしての邪悪な顔も想像以上のものを持って来てくれます。 中でも一番ハードルが高かったのはやはり「計画通り」の暗黒微笑のシーンです。 現作程のものが出せるのかも気になっていたところですが、これ以上無いと言いたくなる程の表情をしてくれました。 むしろ誰がここまでやれといった…! と思わず目を覆ってしまうほどの熱演でした。ミサミサの追っかけをしていた頃の可愛い月くんを返して…! 叫んだり葛藤したり殺意まみれになったりいきなり記憶を失ったりで本当に難しい役だと思うのですがこれ程演じ切ってくれて感謝しきれません。 L役の山崎さんも普段は表情の変わらないキャラなのですが、普段はスマした小憎たらしいオーラを放ちながら驚いた時の目の開き方などインパクトがあり月くんやニアと語っているときの哀愁も大変程よく滲み出ています。 とくに月くんとの決戦シーンでの真に迫る語りかけや「正義は必ず勝つんだよ!!」という叫びは見ている側も怯んでしまいそうな勢いでした。 ニアは女性という事で心配していたのですが見ているとニアの方が大変女性的なキャラになっていて心配していた程大きな違和感もありませんでした。何よりLと合流してからは可愛さが目に留まってLサイドのヒロインのようです。また、メロとの二重人格ということでニアも大変難しい役だと思うのですが役者さんのメロのドス声が容赦なく出ていて見ているとドンドンハマってきます。 あと人ではないのですがリュークとレム。CGなんでしょうか?もの凄く出来がいいなと思います。よく動くし表情もあるしで本当に生きているかのようです。 発言と挙動、ありとあらゆる物を使って月くんをおちょくるリュークの言動は見ていて大変楽しいです。台詞が明るくて可愛いので普通にキャラクターとしても好きです。 ●最後にこのドラマ版について これまで書いて来たようにこのドラマは大変面白くて、毎週楽しみにさせて頂いています。 チラホラと推理の繋がりが苦しい部分や、月くんがどう考えても怪しすぎる場面があったりしますが破綻する程ではないのでその辺りも含めて楽しく見れています。 そして大胆なキャラクターとシナリオ改変が筆頭ですが大変攻めまくっている作品だというのも見ていてヒシヒシと感じます。 私も設定公開の時点では否定的だったと書きましたが、原作通りが求められている中でここまで本格的に原作に対して切り込んで、良い物にしようという気概全開で作って行くのは難しいのではないでしょうか。 人を選ぶのは間違いないですが、先も読めない・新たな一面が見えるという原作に新たな解釈を入れて改めて10年越しに現代で発表する作品として相当に見応えのあるものとなっています。 そしてここまで挑戦的な事が出来たのは原作が「デスノート」という作品だったのも大きいです。デスノートが多くの要素を含み様々な見方が出来る作品であった事と、10年程前にすでにアニメ化・映画化がされており今更メディア展開する事が無いくらいやりきっていた事などが挙げられます。 このドラマがもし映像化一発目だとしたら流石に受け入れられた自信は無いのですが、アニメ化・映画化・小説・ゲーム・舞台と様々な展開がされ、多くの人が元々の原作がどんな話か知っているという中でデスノートの新たな可能性の1つとしてならかなり肩の力を抜いて見る事が出来ます。 そしてなによりも実際面白い。 私は元々原作の改変が苦手な奴でしたが、「改変した上で納得出来る程面白くなるなら良い」という面白いというのが絶対条件ですが私の視野も広げてくれる大変印象深い作品となっています。 現在では第九話が終わったところで、残り話数も少なくなってきましたが相変わらず予想の出来ない展開が続きこれからどうなるのかが全く分かりません。 なにより最終回にてどのような結末を迎えるのか、気になって仕方ありません。 最後まで固唾をのんでハラハラしながら応援して行きたいです! そして長くなりましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました! 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